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レポート掲載| ART OSAKA2022

7月上旬に同時開催された千島土地コレクション展「TIDE ― 潮流(タイド)が形(フォーム)になるとき ― 」と「ART OSAKA2022」の展覧会レポートが母校の京都芸術大学の瓜生通信に掲載されています。

 

私の作品についても、アート大阪に関しての話題内で

詳細かつ、面白い視点でお書き頂いています。

筆者は美術評論、色彩研究の三木学さん。

 

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以下、『アートの街、北加賀屋とアートフェアに生まれる潮流「千島土地コレクション展&ART OSAKA 2022」』京都芸術大学広報課(取材・文:三木学)2022.08.01 

https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/1016 より引用

 

いっぽう、8日から大阪市中央公会堂で開催されたART OSAKA 2022 Galleriesにおいても、京都芸術大学出身のアーティストの作家が目立つ。これは明らかに、椿が主導する、ARTOTHÈQUE(アルトテック)や「ARTISTS' FAIR KYOTO」の成果だといえるだろう。

特に、新作を複数出品していた松村咲希は、さまざまなメディウムとマテリアルのレイヤーを重ねながら、立体的な質感を伴う抽象的な作品を制作している。抽象表現ではあるが、メディウムとマテリアルの衝突や浸食、貫通などによって、遠近法的な奥行きとは異なるイリュージョンが発生しているのがその特徴だろう。今回はそれらの要素を減らし、より還元化された作品を出品していた。

 

松村の作品は、アクリルスプレーや原色、蛍光色による色使いが特徴であるが、モノクロによる新しい表現を開拓しているのも特筆すべきだろう。松村は制作する際、月の地表画像にインスピレーションを受けたという。月の地表には、望遠鏡を使えば地球からでも、コントラストが強いため、クレーターの形態がはっきり見えるが、衛星画像ならさらに鮮明となる。その理由は、光を遮る空気がないからである。松村は、地球ではありえない視覚体験を、月や火星などの地球外の星の地表に見出した。空気遠近法のなさが、非現実的、仮想的、SF的に見える所以であり、線遠近法を感じる幾何学形態がないので、近い部分と遠い部分に差が感じられず、表面の凹凸だけが感じられる。

 

作品には、火星の衛星画像の一部を拡大し、ドットによるシルクスクリーンが刷られ、さらに、モデリングペーストの上にはスプレーが噴かれ、陰影が付いたような表情になっている。空気と水のない星の地表面を撮影したデジタル画像の質感を、マテリアルとイリュージョンを組み合すことで実現してみせた。それは新しい時代の枯山水のようにも見える。そして、宇宙への移動が、人間に新たな知覚と絵画表現をもたらすことを予感させる作品であろう。